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東京高等裁判所 平成3年(行コ)67号 判決

控訴人

時田金吉

被控訴人

足利労働基準監督署長豊田昇

右指定代理人

渡辺光弥

井上邦夫

西沢繁官

吉岡鋭昌

赤羽貞夫

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一申立て

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が控訴人に対して昭和五九年一月一三日付けでした休業補償給付の支給に関する処分及び同月一〇日付けでした労働者災害補償保険法に基づく障害補償給付を支給しない旨の処分をいずれも取り消す。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文同旨

第二主張

当事者双方の主張は、原判決三枚目表二行目の「負傷し」(本誌五八七号〈以下同じ〉37頁4段31行目)を「左下腿打撲の傷害を負い」と、同七枚目表一〇行目及び次行(39頁1段5~6行目)の「障害については、原告の訴える自覚症状によれば、」を「障害は、」とそれぞれ改めるほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

第三証拠

原審・当審記録中の書証目録及び原審記録中の証人等目録記載のとおりであるから、これらを引用する(略)。

理由

一  当裁判所も、控訴人の本訴請求を棄却すべきものと判断するが、その理由は、次に付加訂正するほかは、原判決の理由説示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決一四枚目表七行目の「原告の平均賃金に」(40頁3段25行目)を「右給付基礎日額の算定に当たっては」と改める。

2  同一五枚目表九行目の「右供述は、」(40頁4段27行目)から次行の「かつ、」(40頁4段29行目)までを「一方で、控訴人は、右本人尋問において、日給額をいくらとするかについての合意はなかったとも供述しているのであって、控訴人が支払を受けたと主張する右の」と改める。

3  同一六枚目表末行の「時間数は」(41頁1段30行目)から一八枚目表二行目の末尾(41頁3段14行目)までを「時間外労働を行った事実があることは認められるものの、その時間数はどれだけであったのか、控訴人はその対価として時間外手当の支給を受けたことがあるか、受けたとすればその額はいくらであるかという各点については、前記の控訴人の供述部分以外には控訴人の主張を裏付ける証拠はなく、雇用主である関根建設の代表者である関根が、原審における証人尋問において、控訴人に対して時間外手当を支給したことはないと証言していることも勘案すれば、前記の控訴人の供述部分だけから、これらの点に関する控訴人の主張を認めることは困難であるといわざるを得ない。」と改める。

4  同裏四行目冒頭(41頁3段30行目)から一九枚目裏九行目の「右」(42頁1段5行目)までを次のとおり改める。

「(1) 控訴人は、本件事故の翌日である昭和五六年一〇月二四日、岩舟中央病院を訪れ、左膝の痛みを訴えて、石川医師の診察を受けたが、同医師は、左膝のレットゲン撮影を行ったうえで、膝関節の捻挫に近い非常に軽度の膝内障であると判断し、傷病名を左下腿打撲挫創と診断した。

(2) 一般には、右のような膝内障は、通常は四週間、長くても八週間程度で治癒するものと考えられているものであるが、控訴人は、事故後半年を経過する昭和五七年四月ころまで、月平均四、五回の割りで、同病院に通院して、加療を受けた(ただし、昭和五六年一二月には、一度も通院していない。)。

(3) また、控訴人は、昭和五七年四月ころからは、腰の痛みを訴えて、同病院において、腰部の電気治療、マッサージ等の理学的治療を受けるようになり、同病院への通院日数も増加した。

控訴人が右腰部の痛みを訴えた当時、控訴人の腰椎及び胸椎には圧迫骨折が存し、全体に強い変形が認められ、石川医師は、控訴人の右症状を腰椎損傷と診断したが、その原因については、右の圧迫骨折等が外傷に起因する場合には、立ったり、体位の変更をしたりすることが困難なほどの強い痛みが伴うものであることなどから、そのような経緯を経ていない控訴人の右症状は、加齢による退行性のものであると判断した。

他方、控訴人の左膝の負傷については、受傷後約六箇月を経過したころには、他覚的な症状は認められなくなり、昭和五七年半ばまでには、控訴人も医師に痛みを訴えなくなったので、治療は中止された。

(4) 控訴人は、その後、再び左膝の疼痛を訴えるようになり、右の腰痛とともに同病院において継続的に治療を受けていたが、長期間にわたる治療によっても腰痛及び左膝の疼痛は改善されなかったため、石川医師は、遅くとも昭和五八年九月四日の時点では、控訴人の右各症状は改善の見込みがないものとして、同日をもって症状が固定したと判断した。

(5) ところで、控訴人は、本件事故後、少なくとも昭和五七年四月ころまでの間は、本来の家業である製麺業の配達業務や養豚業のための飼料集めなどの作業にも従事していたものであるが、石川医師は、右の期間以降についても、控訴人が軽作業に従事することは差し支えないと考えていた。

(6) なお、控訴人は、本件事故以前の昭和五六年ころにも、石川医師に対して、腰が非常に痛いと訴え、これは兵役に従事中に痛めたものであるから、傷病恩給受給申請のための診断書を書いて欲しいとの依頼をしたことがある。

(三) これらの事実関係からすれば、控訴人の腰椎及び胸椎に存在する圧迫骨折は、本件事故によるものとは認め難いから、控訴人の主張する腰痛が本件事故に起因する可能性は極めて乏しいというべきであるが、仮に、右の腰痛が本件事故に起因するものとしても、右の各」

5  同二三枚目表四行目の「一二」(42頁4段12行目)を「一三」と、同末行の「対する鑑定意見として」(42頁4段23行目)を「基づき、昭和五九年六月二九日、被控訴人に提出した鑑定書において、」とそれぞれ改める。

6  同二四枚目裏三行目の「石川医師」(43頁1段25行目)から七行目の「認められる」(43頁1段31行目)までを「腰椎及び胸椎の圧迫骨折が、本件事故によるものとは認められないことは前記のとおりである」と改める。

二  以上の次第で、控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であり、本件控訴人は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 橘勝治 裁判官 小川克介 裁判官 市村陽典)

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